コンプレックスをバネに、非進学校から東大合格!いま彼の描く夢とは?

大野康晴さんは、大阪の上宮太子高校から東大文科三類に合格し、後期教養の地理空間コースに在籍する2年生。同校からは7年ぶりの東大合格者で、現役合格は彼が初めてだという。幼少期のことからこれからのことまで、様々なことをインタビューする中で語ってくれた彼の夢、それは実に意外なものだった。

きっかけとなったコンプレックス
――「UTFR(非進学校出身の東大生が、同じような境遇の高校生にエールを送る団体)」代表を務めてらっしゃる大野さんですが、非進学校からの合格ということは、“神童”とか呼ばれてきたんじゃないですか?
『テレビ局のディレクターの人とお話しさせていただく機会があって、その時に神童エピソードばかり聞かれました。ただ、本当にそんなことはなくて。確かに、並みの小学生よりは読書好きで、知識もありましたが、その程度ですよ。好きだったのも歴史くらいです。』
――歴史がお好きなんですね。
『幼稚園のとき、親がゲームの代わりに買ってくれたのが本だったんです。日本の歴史や、日本文化の成り立ちとか、そういう一般教養を教えたかったのではないかと思います。親が読書家だったわけでもないのですが、それがきっかけで僕は読書好きになって、歴史の雑誌を中心にいろいろな本を読みました。』
――歴史以外には?
『算数と理科がとにかくできなくて。今でも小6のときの模試の偏差値が38しかなかったのは覚えています。成績はよかったですが、大阪の市内ではなく田舎の方だったので受験競争もそこまでではない環境でした。だから相対的によかっただけでしょうね。』
――では、実際に勉強に力を入れ始めたのはいつ頃ですか。
『中学生のときですかね、コンプレックスを直視したんです。当時は学校で成績2位だったんですが、1位の子がサッカー部で、活発で、人気があったタイプ。それに対して、僕はすごく根暗で、人とも喋られないし、今でこそストレートパーマをかけているけれど当時はすごいくせ毛で…、』
――おおおおお…。
『ほっそいメガネをかけているし、運動神経も良くない、顔がいいわけでもない。典型的な陰キャってやつでした。「このままでは一生陽の当たらない人生を送らないとならない…」という思いが強まって。でも「勉強ならトップになれるのでは?」と思って。そこから1日2時間、コツコツ勉強する生活が始まりました。』

勘違いでもいいじゃないですか
――それで、その流れで東大を、という感じでしょうか。
『実は「東大に行く!」とか言い始めたのは小学校のときで。全然難易度とかわかってなかったんですけれどね。中学の頃からは周囲にも公言していましたよ。それでも、実力はお察しの通りなのでほぼ絵空事でしかなかったけれどもしかしたら本当にいけるのではないかと思い始めた。高1のとき、全統模試でB判定が出たんですよね。今思えば「あの全統模試でBだからなんだ」という話なんですがね(笑)。』
―進研模試とか全統模試で、ある意味、勘違いして勉強に本気になり始めるケース、あります、あります。
『勘違いしてでも、最後には実現させればいい話ですから。夢を抱かせる模試があってもいいのかもしれないですね。』
――確かに!モチベーションは上がります。では、具体的な東大対策についてはどうですか?
『高2の11月くらいに東大の問題見てみようって思って、一番得意だった英語を解いてみたんです。「難しい単語はないらしいし、得意だしいけるっしょ!」と思っていたのですが、全――――――っ然、点が取れない!(笑)。いや、当然なんですけれど、取れない!それで「流石にやばい」と思い始めて、その日にAmazonで鉄壁と数学の参考書を買って。その日からは1日5〜6時間勉強するようになりましたね。』
――授業の方はどんな感じで受けていましたか?
『高3の夏休みまでは、内職が許されていた授業以外はちゃんと聞いてましたよ。秋からは内職する割合も増えましたが、宿題は必ずやっていました。自分の勉強の中に授業もしっかりと位置付けていました。学校でやらされるセンター対策とかは、基礎事項の確認だと思って黙ってやって、それ以外の時間は東大対策に専念していました。』
――自分なりに気を付けていたことなどありましたら。
『いまの自分を正確に把握することですかね。
①具体的に何が解けないか、何ができるか。
これを紙に書き出して、
②一週間の勉強時間を設定して、
③それをどう配分するか決めて、
④実行して、
①に戻る。
逆算して考えるのが大切なんですが、これが案外できない人が多い。東大って結構、そこを求めているんじゃないかな?生活していてわかるんですよ。国数英社理はあくまで手段でしかなくて、東大が見ようとしている能力はその背景にある。アドミッションポリシーに沿った人材になるための基礎を固めることが本質的なのかも。』
――気分転換に行っていたことはありますか?
『受験勉強の最初の頃って勉強一辺倒になりがちですが、夏休み前には息抜きがてら地元の友達と焼肉に行きました。秋には映画も見に行ったし、東大特進が梅田にあったのでゲーセンにも行きました。あ、あと、スタディプラスで他の東大受験生と繋がっていたのが良かったですね。ライバルもできたし、勉強の成果を公開するのはモチベーションになっていました。』
今僕の中にある思いは…
――東大に入ってからインパクトを受けたことは。
『夢に思い描いていた割に「東大つまんねーな」と思って。地方の東大合格者が少ない高校の人って東大に幻想を抱きがちで、「あそこは素晴らしい環境だ」とか「みんな意識高く上を見ている」と思ってしまっているので、現実とのギャップに割と4月はふさぎこみましたね。
ただ、それでも凄い人は一定数いて。そういう人たちと繋がっていけば何かが変わるんじゃないかと思い、UmeeTに入りました。埋没したくないという思いがすごくあったんですよね。』
――今抱いている夢などはありますか?
『対話という営みに興味があって。インタラクションを生む場としてのカフェを作りたいという思いがあります。バリスタなんかもいいかなぁと。今度の五月祭でもコーヒー出すんですが。』
――カフェを…!
『コーヒーを淹れる作業がしたいのか、場づくりがしたいのか、結構ぐらついているんですけどね。カフェ経営をするならちゃんと経営を勉強して店を立ち上げたい。好きなことをやって生きていきたいという思いが強いです。
東大に来たからこそできることをやる方がいいのではないかという思いも捨てきれないので、まずリサーチが大事かなと。冬にノルウェーかドイツに行って、カフェを巡って、そのお店で働いている人たちに「なんのために生きているのか」と聞いて回ろうと思っています。それから、自分の理想のカフェ像を磨くために1年休学して、日本を見て回りたいと言う思いもありますね。』
――まず調べ上げるというのが東大生らしい…(笑)
『あと、来年はフランス語をちょっとやろうかなと思っていて。様々な人とコミュニケーションができるようにしたい。今だといろんな翻訳機能があるけれど、あれは本当の意味でコミュニケーションなのかな?という思いが強くて。文化的な背景がわからないと、通じないジョークもありますし。外国語でボケられても、僕はネイティブではないから機転が利いた返しは到底できないけれど、それでも相手の文化のことをちょっと知っておくのは、コミュニケーション上大事かもしれないと思います。』
――素敵な考えです。それでは最後に受験勉強を頑張る高校生に、大野さんからメッセージをお願いします。
『“自分を一番甘やかすことができるのは自分だが、自分を一番厳しく律することができるのも自分”。「友達が遊びに誘ってくるから勉強する時間がない」という人がいるけれど、友達と遊ぶって自分で決めていることですよね。それは自分の甘やかしなんですよ。一方で、自分を一番追い込むことができるのも自分。何事も、選択の余地があることは自分自身の責任なのです。だからこそ自分に妥協しちゃダメだと思います。』
おわりに
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執筆:三浦康太郎
編集:ニシヤマミオ、遠藤和真