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逃げてもいい。自分の夢から逃げなければ。いじめを経てなお東大の夢を見据えて。

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今回の取材を引き受けてくれたのは法学部2年の佐倉北くん。中国人の両親を持ち、受験に使ったのも英語の代わりに中国語。それだけでもハンデがあった上、過去のいじめの経験から、勉強は困難をきわめた。彼を支えたものは、東大で勉強するという夢だった。

あまりに苦い過去

ーー佐倉さんが生まれ育った環境について教えてください。

『両親は中国人で、僕は日本生まれです。家庭内では中国語でしゃべっていました。父親の意向で、多くの国の文化に触れさせようと、小学校1~3年生前半ではアメリカの現地の学校に通い、それから中国に行って、3年間過ごし日本に戻ってきて小学校の残りの半年間を過ごしました。そこからは中・高・大と日本にいます。父親とはほとんど会わない生活でしたね。結果的に海外での経験は今も役立っていると思います。一緒に生活しないとわからないことがやはりあります。日本生まれという理由で差別を受けたこともありますが、彼らが根っから悪い人ではないんだなということもわかりました。大人から影響を受けて反日的な感情を持っていただけで。自己主張が強い気風と相まって、時に差別的になってしまうんだろうな、と。そういう見方ができるようになったのは良かったですね』

ーー佐倉さんは今2年生ですが、ご年齢は23歳と伺っております。

『はい。高校の時にいじめを受けて半年間不登校、出席日数が足りなかったので一度留年しました。それに加えて、2浪して東大に合格しました。だからプラス3ですね。』

ーーいじめを…。

『当初通っていたS高校での生活は本当に地獄のようでした。クラスメイトからの無視・暴言・暴力。中国人だということで差別を受けることも。留年することになった際に中途退学して、元不登校の生徒を積極的に受け入れている新宿山吹高校に転入しました。留年することになった時には号泣しました。いじめに耐え切って、東大に行くことで全てが報われると思っていたので、その道までもが絶たれるように感じたんです。転入してからは何気ない生活がいかに幸せなものなのか、噛み締めて過ごしていました。』

ーーそれはさぞかし辛かったでしょうね…。 受験勉強にも支障が出たのでは?

『”高校4年”になってから始めたんですが、なかなか本気になれなくて。というのも、いじめの経験を経て、現実逃避癖がついたんです。スマホの動画とかテレビとかゲームとか、どうしてもみてしまう。直前期でも1日全く勉強しなかったとか普通にあります…。1浪の直前期の2週間は本当にちっとも勉強しませんでした。それで夜型の生活になってしまったのもあって、受験1日目には30分しか寝られなかったことも。その結果としての2浪ですね…。現役時代は当然落ちるなって思って落ちました。というか、センターでの足切りで落ちました。1点差だったかな。浪人してからは河合塾に通わせてもらったんですが、それでもなかなかサボりがちで…浪人2年目になってやっと本格的に、人より何倍も学習量を課してやりはじめました。それでも何度か自分の弱さに負けてしまったこともありましたが…。夏休みの模試が近づいてきて、その現実に目を背けたくてちょっとスマホを見たら全然コントロールが効かなくなって、20日間1秒も勉強できなくなったんです。それに、2年間、河合本郷に通うと、同じ校舎なので、塾の先生に覚えられちゃって辛かった。2浪の「もう落ちられない」という強迫感は凄いですよ。』

佐倉さんの日記。苦悩の跡。

ーー不登校を経験した、あるいは現在不登校の人に伝えたいことがあればお聞かせください。

逃げてもいいんです。僕はいじめられていた時、逃げたら負けだという思いがあって。それは情けないことだと思って我慢し続けました。我慢しても何か得られるわけではなくて自分の心を傷つけるだけでした。それはたとえるなら、火事の中にいるようなものです。最初、逃げるという選択肢は頭にあるんですが、耐えるうちに、ガスが充満して視界が真っ暗になってしまう。ガスの充満で判断力が鈍り、壊れたように、我慢することしか考えられなくなる。一刻も早く逃げるという選択肢を取ることが大事なのだと思います。2、3日休むくらいでもいいし、学校をやめてしまってもいい。転校・フリースクール・高卒認定試験など選択肢はある んです。今後の自分の人生で何が一番プラスかと考えてほしい。理不尽に対しての我慢が美徳とされる風潮がありますが、それがいつでも正しいわけではないのです。逃げたら、夢から遠ざかってしまうかもしれないけれど、それでも恥ずかしく思うことはないんです。』

受験におけるハンディキャップ

ーーありがとうございます。他に、受験で他の人と比べてハンデだと思ったことはありますか?

『中国語入試を受けたんです。東大の英語以外の外国語入試では、英語の第4問・5問を差し替えるか、全部外国語にするかが選べます。前者を選ぶ人が多いのですが、僕は全部中国語の方で受けました。センター試験から全部です。』

ーー東大の中国語入試なんて見たこともないのですが、どういうレベルなんでしょうか?

『めちゃくちゃ難しいです。母は純中国人ですが、それでもあれは難しいと言ってました。不登校などもあって実力が落ちていた英語よりは少なくとも自信があったので、中国語にしたのですが…』

ーー中国語で受けるのは不利なんですか?

『そう思います。塾とか予備校でも中国語の講座があるわけではないでしょう?それに、問題集とか赤本とかもない。僕は国会図書館に行って、そこに保存されている東大新聞の受験特集過去25年分を調べて、そこに掲載されている問題や回答のコピーを取って家にもちかえりました。そこにたどり着くまでにもありとあらゆる情報を探しました…!しかも、模試もないから自分の実力がわからないし、採点も自分の裁量でやらないといけない…。グローバル化と言っていますが、受験で使える外国語の数も減らされたみたいですし。』

( 参考:Wikipedia 「東京大学の入学試験」http://bit.ly/2CSMXeC  に東大入試の歴史が載っています。)

ーーこれほどの境遇からそれでも東大を目指されたのはなぜでしょうか?

『小さい頃から東大っていうのが夢の場所だったんです。3回受けましたが、全て東大一本でした。東大がやっぱりNo1ですし、トップレベルの教育機関だからトップレベルの大学生が集まって、それが自分にとって一番ためになると思いました。』

夢見た東大での生活

ーー入ってみて、実際どうですか?

『やっぱりいい場所だなって思いました。思った以上にいろいろな人がいたし、自分が楽しいと思えることがいっぱい見つかった。新しいものにも興味・好奇心がいっぱい生まれました。1番は語学。きっかけはスペイン語。最初2外なんてやる意味あるのかなって思ってましたが、だんだん自分に力がつくのがわかって楽しかったんです。新しい人と言語を介して話せると、自分の新しい一面も感じられたし。今でもスペイン語をやってるし、2年生になってから韓国語もやっています。また、2月からは北京大学に留学して中国の政治・経済・教育などを学ぶ予定です!

笑論法での一幕

ーー入ってからはどんなことをしてらっしゃいましたか?

『受験中は辛いこともあって、癒しとしてスマホでお笑いの動画を見てて、人を笑わせるってすごいなと思って、笑論法というお笑いサークルに入りました。他にも、演じることが好きだったので劇団Radishで半年間演劇をしてみたり。将来、いじめ問題をなんとかしたいと思って、法曹を目指していたので、話術・説得力を鍛えるために弁論部もやってみました。2年生で入った川人ゼミという社会問題を学ぶゼミも大きかったです。そこで書いたレポートがきっかけで、いじめの被害者を直接的に救う弁護士より行政に行った方が多くの人のためになるんじゃないかなと思って、官僚を志すようになりました。そのレポートのための情報収集で、フリースクールRizっていう 不登校の中高生が集まる場所を見つけて、今もそこでボランティアに携わっています。』

ーーフリースクールですか。

『僕には学校の先生にいじめがなかったことにされてしまう経験もあったんですが、今や色々な選択肢があり、もっと早くいじめから脱せたと思います。そういうことをもっと知って欲しくて、やってます。』

ーー東大の講義はどうですか?

『東大にギリギリで入ると、入った後ついていくのが大変だという実感はあります。現実逃避もまだあって、法学部の講義とか、わからなくて逃げ出したくもなります。ただ、それでも、東大は死ぬほど努力したり苦労してやっと入れた大学だから、一生懸命頑張った分東大に入った後も頑張らなきゃなって思ってます。講義を切るなんて考えも全然ないです。頑張った自分に報いられるように今も頑張ろうという気持ちです。』

ーー東大に来る価値とはなんでしょうか?

『東大自体がその人のためになるっていうだけではなくて、東大に入るまでの苦しみとかそういう過程が大事だと思っています。東大に入ってからも自分の実力と合わずに苦しむ人もいるだろうが、受験の苦しみを乗り越えたという経験はその人の中に残るから。“東大に来る=東大で勉強する+受験勉強を乗り切る”だと思うんです。受験勉強時代も全然報われないと思うことが多かったし、勉強しない人・サボる人が自分より成績が良いことも多くて、イライラしたこともありました。でも、いつか最後の最後で勝てばいい、それまではいくら負けてもいいや、という思いで辛抱したから今があるのだと思います。繰り返しになりますが、逃げてもいいところでは逃げましょう。自分の夢から逃げなければそれでいいんです。

記者撮影。これからも笑顔を届けていってほしい

おわりに

最後までお読みくださりありがとうございました。私たち『東龍門』は、東大生ならではのノウハウを活かし、受験や勉強に役立つ情報をTwitterでも発信しています。よかったらチェックしてみてください。また、質問などもお気軽にどうぞ!

執筆:三浦康太郎

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